演劇×音楽な話でつづるディスクレビュー
THEATRICAL MUSIC LIFE　その9

「ピアノといえばこれですよこれ佐々木さん！」特集

その9で一言
　最終的にどこが正攻法だったのか、我ながら疑問です。佐々木さんが誰なのかは桜丘社中の塩塚さんに聞いてください。
Written by SHIRO

2002.12.10 N.M.L.(NO MORE LANDMINE) 『ZERO LANDMINE』 佐々木さんへのメールでは「後はやっぱマイケル・ナイマンかな〜」と 実に優等生的な終わり方をしたのですが、ここでは別のものをご紹介。完全にYMO世代ですからして N.M.L.にはビックリしたなぁ。3人揃ってますからね。ちと冗長な1曲目より短縮版の方が 好み。てかピアノをバックにデビッド・シルビアンが1人で歌う2曲目が一番好きかな。 大挙参加した日本人ミュージシャンたちの歌声は誰かすぐわかっても、ギターはどれが タクローやらスギゾーやらわからぬ……ぬぬぬ。KRAFTWERKのサウンドロゴが カッコイイ！　が、ラジオ局の開局記念か何かにも送りつけてきたようで、ありがたみは ないのね。教授もいいけどSKETCH SHOWの音楽にニンマリしてしまう今日この頃。 2002.12.08 ZNR 『TRAITE DE MECANIQUE POPULAIRE』 普通にピアニスト紹介してもつまらんのでアヴァンギャルドな奴で一組、と 挙げたのがZNR。エクトル・ザズーとジョゼフ・ラカイユというフランス人キーボード・ デュオ？　アルバムでは管＆弦楽器サポートらが何人かいて、ボーカルなんかの入る曲も あるからデュオちゃうかな。本作は邦題『一般機械学概論』てな2ndアルバム。明らかに エリック・サティの影響下にある、捻じ曲がってるけど心地良いナンバーがテンコ盛り。 無理矢理カテゴリーに入れるとチェンバー・ロックという部類なのですが、室内楽的？　 うーん説明し難い。ま、これ嫌いって人はそうそういないでしょうからして、まずは 佐々木さん聴いてみそ。オイラはさ、ラカイユの繊細でシャキッとしたピアノが好きなんでい。 2002.12.06 Debbie Gibson 『MOONCHILD』 「ピアニスト挙げろ」云われて彼女を思い出す人は少ないかな。私的には 全盛期に来日して、ラジオの企画でピアノ1本によるアコースティックライブやった時の 記憶が鮮明でして。ビリー・ジョエルやエルトン・ジョンの曲まで楽しそーに弾いてたっけ。 本作はハウスなんかに迷走した後のポップに戻った快作。実はピアノインストとなると 本作1曲目の18秒だけだったりするのね。「青春」なんて青臭い言葉を感じずには いられない爽やかな歌詞と歌声ももちろんイイ！　カイリーじゃないけど、この娘も 売れなくなって舞台に活路を見出したクチで、女優としてのスタンスも評価されてます。な訳で 16、17曲目はミュージカル「ファニー・ガール」の挿入歌。しかしジャケは……マライアかよ！ 2002.12.05 Keith Emerson 『HONKY』 ELPのEの人。SFチックな展開でほの暗い楽曲が多いELPと比べると、キースの1stソロ アルバムである本作はかなり明るいイメージです。ELPでも『LOVE BEACH』に一番近い。それも そのはず同時期録音。しかし『LOVE BEACH』以上に開放感あふれた内容は、ELPという枷が 無くなりホッとしたが故なんでしょうかしら。元々、クラシックの素養がある人でして、 ELPの前のバンドNICE時代は特にその色が強かったのですけれど、次第に本作タイトルのごとき HONKY TONK（米国南部の白人向け娯楽音楽）やジャズなどを取り入れて、ロック・ピアニストという 独自の存在になってしまいました。「Green Ice」を何かの芝居で使った覚えがあります。 すでに1回紹介しちゃってますけど、ELPの作品群はピアノという観点からも聴き応えありますぞえ。 2002.12.04 Chick Corea 『THE MAD HATTER』 佐々木さんには「もう『Spain』て名曲書いてるだけでチックはオイラのヒーロー なんですから！」ってなメールを送った覚えがありますが、バッサリ「Spain」の入ってない 本作を紹介してしまうのです。クリエイターとしてのチックを知るにはピッタリですからして。 単にピアニストってだけで紹介したくないのよ。「不思議の国のアリス」（しかもディズニー版）に 材をとった本作は、ミスティックな多重録音の1曲目、モロに熱いジャズな4曲目もありつつ、 管に加え弦楽器やボーカルと絡み歌劇のように展開する曲が大半を占め、 トータルアルバムとして説得力のある大傑作なのです。過去に芝居で数曲使ってたりします。 8曲目はちと「Spain」ぽいね。華やかなピアノはラスト3曲で味わってみて。 2002.12.03 Red Garland 『RED GARLAND'S PIANO』 マイルス・デイヴィスの『RELAXIN'』がキライって人は滅多にいませんが、 それ多分、1曲目が「If I Were A Bell」だからってのも理由のひとつだと思うのです。 全体に漂うリラックスしたムードもさることながら、あの冒頭「キーンコーンカーンコーン」が 鳴るとそれだけでニンマリしちゃいますからね。蛇足ながらクリスマスにもピッタリ。 で、そのピアノはレッド・ガーランド。同じ曲が入ってるんでトリオ演奏の本作を聴いたら、 雰囲気は違うもののこれもなかなかの名演なのです。湿った枯葉の上をステップするような 叙情的なピアノなの。ビル・エヴァンスをロマンティックな甘さと例えるなら、ガーランドは 幾分ビター。彼ならではの翳りのある明るさが心に響く夜もある……と自分にも酔えます。 2002.11.30 Bill Evans 『GREEN DOLPHIN STREET』 趣向を変えて「ピアノといえばこれですよこれ佐々木さん！」特集。奇をてらわずに 正攻法で参ります。ビル・エヴァンス！ リリカル！！ オイラの場合、ジャズ・ピアノと 云えばまずこの人が浮かびます。名盤数ある中であえて本作。ジャケを見ながらね、 フィリー・ジョーのシンバルワークに導かれてピアノが流れ出すとさぁ、もう完全に 「あなたと夜と音楽と」って世界に吸い込まれてしまう感覚なんですよ。繊細でありながら 力強くもあるタッチ。う〜ん神業。アルバム後半のスイングしまくりも顔が ほころぶ楽しさです。ちとベース・ソロが長いとこぐらいしか文句の付けようがありませぬ。 リバーサイド4部作にはない奔放さも魅力的。オリジナル盤はタイトルに「ON」が付いてなかったよね？ ■最新エッセイへ！ ■過去エッセイ10へ！